~卵巣の老化、AMH~

みなさん、こんにちは!院長の園田です。
いよいよ12月に入り、今年も“あっという間の一年だったな”と感じる時期になりました。
街にはクリスマスイルミネーションが輝き、年末の慌ただしさの中でも、ほっと心が和むひとときを感じさせてくれますね。

先日、某テレビ番組で不老長寿、老化についての特集があり、とても興味深く視聴しました。

2024年の日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳ですが、100年前は42〜43歳程度でしたので、この100年で約40年も伸びたことになります。​

伸びた主な要因は、乳幼児死亡率の大幅な低下、感染症対策、栄養状態の改善、医療技術の進歩などが考えられます。

その結果、現在、「とにかく長生きすること」「何歳まで生きるか」より「どれだけ元気に生きるか(健康寿命)」が重視されるようになり、国の施策でも「平均寿命」より「健康寿命を延ばすこと」が明確に掲げられるようになっています。​

100年前であれば、老化対策や予防を考える前に寿命を迎えることが一般的でした。しかし現代では平均寿命が大きく延びたことで、「いかに老化に抗うか」という発想が私たちの意識に定着し、さまざまなエイジングケアが提案される時代になっています。

また、私たちは「1年経てば身体も1歳年をとる」と考えがちですが、実際の老化スピードには大きな個人差があります。ゆっくり進む人は 0.4歳/年、早い人では 2.44歳/年 と、その差はなんと約6倍にも及ぶと言われています。

私も毎日の診療において、この老化スピードの個人差を大きく感じることがよくあります。

AMHの結果や卵巣のエコー所見を診たときです。

不妊治療では、今後の治療方針や、ARTにおける卵巣刺激法の選択を検討するために、AMHというホルモンの値を測定します。AMHは卵巣から分泌されるホルモンで、卵巣の予備能力やいわゆる卵巣年齢を示す指標とされています。そしてこのAMH値には大きな個人差があり、卵巣の老化スピードもほかの細胞や臓器と同じように、人によって大きく異なることがわかっています。

AMHが低い結果だった方から「原因は何ですか?」とよく質問を受けますが、はっきりとした原因は分からないということが正直なところです。

個人差の主な要因としては、生活習慣や遺伝、環境などが考えられます。遺伝については自分で対策することは難しいですが、生活習慣や環境、例えばストレスの軽減などは改善の余地があるのかもしれません。

当院で治療されている方々は、日常生活において、老化を意識するようなことはないかと思いますが、妊娠に向け、また妊娠中、妊娠後の育児も含め健康な生活を送るためには生活習慣の土台づくりが大事です。

毎日の運動習慣を心掛け、食生活では、食事は野菜を多めに、主菜と副菜のバランスを意識し、朝食をきちんととることで自然と体重管理につながります。糖質やお酒は控えめにしつつ、魚や乳製品からビタミンDやカルシウムを補うことを心掛けましょう。また葉酸は胎児の発育に大きく影響を及ぼしますので、しっかりとサプリや食餌で補っていきましょう。睡眠は6〜8時間を目安にしっかり休み、毎日の中にほっとできる時間を少しだけ作って、ストレスをため込まないようにしましょう。禁煙や適度な飲酒を心がけ、年に1度の健康診断で体の状態を確認しましょう。こうしたシンプルな習慣の積み重ねが、将来の健康な生活を支える基盤になります。

簡単にできそうで、なかなか難しいことですが、少しずつでも変えていけたらいいですね。

当院では専門家による栄養カウンセリングや、心理カウンセリングもありますので、利用してみてください。

今年一年、時には立ち止まり、時には思い切って一歩を踏み出すなど、多くの経験を重ねられたことと思います。不妊治療は「これが絶対の正解」というものがない医療ですが、私たちとご夫婦で一緒に考え、導き出した結論こそが、何よりも大切で正しい選択だと考えております。

今年一年、みんな本当に頑張りました。

来年は更に良いことが待ち受けているとワクワクした気持ちを持って2025年を締めくくりましょうね。

院長  園田桃代