精子のためにできること

精子のためにできること

今回は培養室から、
少しでも精子の状態を悪くしないために気を付けて頂きたいことをいくつかご紹介させていただきます。

喫煙は今すぐやめましょう!

タバコの煙には200種類以上の有害物質が含まれ、
精子数、精子の運動能力、正常形態精子数の低下をもたらします。

また、有害物質の一つである一酸化炭素は血液中の酸素の運搬を低下させるため、各器官は酸欠状態となり機能が衰え、
精巣も精子をうまくつくることが出来なくなります

実際に、喫煙者とそうでない人の精子の状態を比較した報告では、
喫煙者の方が精子の状態がかなり悪いという結果が出ています。

喫煙は不妊の原因になるだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康にも良くないのでやめましょう。

禁欲期間は短くしましょう!

精子は毎日つくられ貯蔵されていきます。

そのため、
禁欲期間が長くなると精子の数は増えますが、古い精子も多くなります。

古い精子からは活性酸素が発生し、それによって新しくつくられた精子のDNAが損傷してしまう可能性が高くなります。

DNAが損傷してしまうと、
妊娠率が低下し流産率が上昇することが報告されているので、
精子は定期的に出すようにして古い精子を溜めないようにしましょう。

下のグラフは、当院で実施した人工授精の処理後の運動精子濃度と妊娠率を禁欲期間別に示したものです。
禁欲期間が6日以上になると妊娠率が低下していくことが分かりました。

人工授精実施時における禁欲期間別の処理後運動精子濃度と妊娠率のグラフ

精巣の暖め過ぎには気を付けましょう!

精巣の温度は32~35度に保つのが理想的であり、それ以上高くなると精巣の機能が低下します。

精子も熱に弱く、精巣の温度が高くなると死んでしまったり動く力が低下してしまいます。

特に、精索静脈瘤や肥満の男性は精巣の温度が高くなりやすい傾向にありますが、
健康な男性であっても風邪やインフルエンザによる高熱が続いたり、膝上での長時間のノートPCの使用、長風呂・長サウナ、長時間の運転、精巣周囲を締め付ける下着を着用していると、精巣の温度が高くなるので気を付けましょう。

体内に活性酸素を溜めないようにしましょう!

活性酸素は呼吸によっても発生しますが、体に溜まると体内が酸化した状態になります。

体内が酸化した状態になると、様々な病気の原因になるだけでなく、近年の不妊治療の研究では、精子のDNA損傷率が高くなることも分かってきています。

さらに、精子の運動率低下や奇形率増加にも大きく関わっていることが報告されています。
NHKで放送された『精子力クライシス』でも活性酸素について取り上げられています。

活性酸素は、ストレス、喫煙、過度な飲酒、添加物の多い食品の摂取、激しい運動、睡眠不足によって発生し、加齢に伴い体内に溜まりやすくなります。
少しでも活性酸素を溜めない生活習慣を心掛けましょう。

最後に、体調管理に気を付けましょう!

精子は精巣の中で約72日間かけてつくられます。

これだけの長い期間を精巣の中で過ごすことになるので、疲れやストレス、生活習慣の乱れによって体調を崩してしまうと精子の状態が悪くなることがあります。

今回ご紹介した内容と体調管理には十分気を付けて頂き、ご夫婦揃って妊娠に向けて少しでも良い状態をつくって頂ければと思います。