漢方のお話と多嚢胞卵巣症候群(PCOS)

 

以前の院長のブログでもありましたが今回は多嚢胞卵巣症候群(PCOS)について、
漢方に出来ることも追加でお話したいと思います。

まずPCOSとは?

生殖年齢にある5-10%の方に存在するとされ、排卵障害による月経不順や不妊症を呈します。

*月経異常 

*超音波検査で小卵胞が10個以上

*黄体化ホルモン(LH)or 男性ホルモン高値

を満たすと診断されます。

妊娠を希望する場合はクエン酸クロミフェンやフェマーラ、注射剤などを用いた排卵誘発が主になってきます。

肥満があれば減量も必要ですが、耐糖能異常、インスリン抵抗性といって血中のインスリン値が上昇しているよう状態があれば排卵誘発剤と併用してメトホルミンというインスリン抵抗性改善薬を使用します。

PCOSの方は抗ミュラー管ホルモン(AMH)が異常高値となる事も多いのですが、この高AMH血症は卵胞発育を阻害する(AMHが直接卵胞刺激ホルモン;FSHを阻害するため)ことが報告されています。

ここから漢方薬のお話です。

『温経湯』という漢方薬をご存じでしょうか?

漢方では 月経不順があったときに処方する漢方薬は一つとは限りません。その方の体質(証)によって処方される漢方薬が決まります。同じ月経不順でも自分とは違うお薬を内服している人もいる事になります。

温経湯を処方する人の特徴ですが、
手のひらの汗や赤み
唇の乾燥やかかとのカサカサ
下半身の冷え
などを参考に処方しています。

血のめぐりが滞る『お血』の状態とお血の為に新血ができない『血虚』の状態を改善します。

子どもを宿るに大事な『血』の状態を改善する薬です。

月経不順に対しては視床下部に作用して卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の分泌を促す作用があります。
結果卵胞の成熟、排卵の回復、黄体機能の向上につながります。

PCOSの様な黄体化ホルモン(LH)が高い症例にはLHを抑え、
エストラジオールの分泌を促進させてホルモン調整し排卵障害を改善します。

数か月に1回しか月経がない方でも内服開始後順調な月経周期になる方を経験します。

温経湯は月経痛、抗ストレス作用があるので抑うつの改善、粘膜を潤す作用があるのでドライマウスの改善、月経に合わせて悪化する手の湿疹などなど、漢方薬特有の改善する症状は一つとは限らない威力を発揮します。

ご興味のある方 不妊症でお悩みの方
一度漢方外来を受診してくださいね。

小柳