みなさん、こんにちは!院長の園田です。
うだるような暑さが続いた夏も終わりを迎え、暦の上では秋の始まりとされる立秋(8月7日)から、早くも1か月以上が経ちました。時の流れの早さに、改めて驚かされます。
先日、まだ少し夏の名残を感じる京都を訪れました。あるお寺で耳にしたのは、静かな境内に響く心地よい「ししおどし」の音。ゆったりとした時間の中で、日本ならではの「わび・さび」の文化に触れ、心身ともにリフレッシュすることができました。
普段、デジタル機器に囲まれて過ごしているからこそ、時には画面から離れ、自然の音や静かな空間に身を置く時間も大切ですね。
自然が奏でる音に耳を澄ます――そんな小さな「デジタルデトックス」が、心を整えるきっかけになるのかもしれません。

少子化や人口減少が大きな社会課題として語られることの多い現代日本。
その一方で、医療の力を借りて新しく誕生する命が着実に増えていることをご存じでしょうか。
日本国内において、体外受精や顕微授精といった「生殖補助医療(ART)」は、いまや家族を迎えたいと願う人々にとって特別なものではなく、人生設計におけるきわめて身近な選択肢となっています。
先日、日本産科婦人科学会から最新の「2024年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」が発表されました。今回は、この客観的な統計データを基に、私たちの社会において不妊治療が果たしているリアルな役割と、その「いま」についてお話しますね。
1. 2024年の最新データが明かす「生殖補助医療で生まれる子どもたち」
最新の統計によると、2024年の1年間で、生殖補助医療(ART)によって誕生した子どもの数は、実に86,473人にのぼります。
この数字は、日本国内で生まれる多くの子どもたちの家族づくりを医療が力強く支えていることを示しています。
さらに注目すべきは、日本で生殖補助医療が始まってからこれまでに誕生した子どもの累積数です。
その累計はなんと1,089,822人と、すでに108万人を突破しています。
北摂地域の人口は、豊中市40万人、吹田市39万人、茨木市29万人ですので、この3つの市の総人口と同じぐらいの数になりますね。
また100万人以上という規模は、日本の主要な政令指定都市の人口をも超えるインパクトを持つ数字です。私たちの身の回りでも、これほど多くの人々が生殖補助医療(ART)によりこの世に生を受け、それぞれの人生を歩んでいるということに改めて驚きを感じます。
この確かな実績の背景には、実施されたすべての周期数を指す「総治療周期数」が、年間で550,265周期に達しているという、家族を望む患者さんたちと医療機関によるひたむきな挑戦の積み重ねがあります。


2. 20年で急増!データから読み解く「不妊治療」の一般化
今でこそ不妊治療は身近な選択肢となりましたが、ここまでの普及は一朝一夕で成し遂げられたものではありません。2000年代初頭からの推移をデータで振り返ると、その変化の大きさに驚かされます。
日本産科婦人科学会がまとめた過去からの推移データを見ると、2001年における生殖補助医療の治療周期数は約7.6万周期(体外受精32,676周期、顕微授精30,369周期、凍結融解胚13,034周期の合計)、出生児数は約1.3万人(体外受精5,829人、顕微授精4,862人、凍結融解胚2,467人の合計)でした。
しかし、そこから2024年に至るまでの約20年間、治療周期数・出生児数ともにほぼ一貫して右肩上がりの急速な増加を続けています。
この期間に医療技術そのものが着実に進歩・確立されてきたことはもちろん、不妊治療を取り巻く社会的な理解や支援の広がりが、患者さんたちの心理的・経済的なハードルを低くしてきました。
その結果、2024年の総治療周期数は550,265周期にまで達しています。「特別な一部の人のための医療」から「誰もがアクセスできる一般的な家族づくりの選択肢」へ。この右肩上がりのグラフの軌跡は、この20年で不妊治療が日本社会にいかに深く浸透し、一般化してきたかを如実に物語っています。
3. いまの主流は?データが示す「凍結胚(卵)移植」の圧倒的な実績
「体外受精」や「顕微授精」と聞くと、採取したばかりの卵子を受精させ、すぐに子宮に戻す治療法をイメージする方も多いかもしれません。しかし、現代の不妊治療における実際の主流は、技術の進歩によって大きく変化しています。
最新のデータが示す治療法別の出生児数を見ると、その実態が非常にはっきりと分かります。
2024年の1年間に、採取したての卵や胚をそのまま移植する「新鮮胚(卵)を用いた治療」によって誕生した子どもは3,385人でした。これに対して、受精卵を一度凍結し、タイミングを合わせて移植する「凍結胚(卵)を用いた治療」(治療周期総数268,923周期)によって誕生した子どもは、実に83,088人にのぼります。
これは、生殖補助医療によって生まれる子どもの9割以上(約96%)が、凍結された胚や卵子の移植によって誕生していることを意味しています。
かつては採卵した周期にそのまま移植する新鮮胚移植が一般的でしたが、現在では採卵による母体への負担やホルモンバランスの乱れを回復させ、子宮内膜が受精卵を最も迎え入れやすいベストな状態に整ってから移植を行う――この「凍結・融解技術」の劇的な向上が、現代の日本の高い治療実績を支える極めて重要な鍵となっているのです。
4. まとめ:家族の「未来」を支える大切な選択肢として
最新のデータが示す通り、年間8.6万人以上の誕生を支える日本の生殖補助医療(ART)は、いまや私たちの社会になくてはならない「未来へのバトン」を渡す仕組みとなっています。不妊治療によって生まれてきた累計108万人を超える子どもたち、そして今この瞬間も新しい命を待ち望み、治療に挑戦している何十万組ものご夫婦が、日本の新しい日常を形作っています。
医療技術の進歩は、不妊に悩む方々に確かな希望を届けるとともに、「家族を持ちたい」という願いを叶えるための選択肢をより安全で、身近なものへと変えてきました。不妊治療という選択が、すべての患者さんにとって優しく、そして誇らしい選択肢であり続けられるよう、社会全体での温かい理解とサポートが今後さらに深まっていくことが期待されます。

院長 園田桃代

