培養士って何をしているの?~採卵から移植まで~

こんにちは。培養室です。

暑さも少しずつ和らぎ、朝晩には涼しい風を感じる季節となりました。日中も過ごしやすい日が増え、秋の訪れを感じる今日この頃です。

季節の変わり目は体調を崩しやすい時期でもありますので、皆さまどうぞご自愛ください。

さて本日は、私たち培養士が日頃どのような仕事に携わっているかを、あらためてご紹介したいと思います。

不妊治療を始めて、初めて「培養士」という仕事を知ったという方も多いのではないでしょうか。

診察や採血、超音波検査などに比べると、患者さんからは見えにくい仕事かもしれません。

私たち培養士は、主に胚培養室(ラボ)で、卵子や精子、受精卵(胚)を扱う仕事をしています。

今回は、採卵から移植までの間に、培養士がどのような仕事をしているのかをご紹介します。

◎採卵された卵子を確認します

採卵によって卵巣から採取された卵子は、まず培養士が顕微鏡で確認します。

採卵では、卵子だけが採れるわけではありません。採取された液の中から卵子を探し、一つひとつ状態を確認していきます。

卵子が見つかると、適切な環境で大切に管理します。

その後、卵子はどうなっていくのでしょうか? ここから培養士が、採取された卵子を一つひとつ確認し、次のステップへ進めていきます。

◎精子の状態を確認・調整します

体外受精を行う場合には、精子の状態を確認し、治療方法に合わせて調整します。

精子の数や運動性などを確認し、その後の受精操作に適した状態に整えていきます。

受精方法は、処理後の精子の状態によって変更される可能性もあります。

◎受精操作を行います

精子の調整が終わったら、卵子と精子を受精させるための操作を行います。

受精方法には、主に「媒精」と「顕微授精」があります。

媒精では、卵子の周囲に調整した精子を加え、精子自身の力で卵子に入り込むことで受精を目指します。

一方、顕微授精では、培養士が顕微鏡下で精子を一つ選び、専用の細い針を使って卵子の中へ注入します。

このように、受精方法によって操作は異なりますが、どちらも卵子と精子を出会わせ、受精へとつなげるための大切な工程です。

◎受精したかどうかを確認します

卵子と精子の受精操作を行った後、無事に受精が起こったかを確認します。

当院では、タイムラプスインキュベーターを使用して胚を培養しています。

タイムラプスインキュベーターでは、培養器から胚を取り出すことなく、一定の間隔で胚の様子を撮影することができます。

そのため、受精後の胚を連続的に観察し、撮影された画像から受精のサインとなる構造を確認します。

受精が確認された卵子は、その後「胚」となり、細胞分裂を繰り返しながら成長していきます。

◎胚の成長を見守ります

受精後の胚は、細胞分裂を繰り返しながら少しずつ成長していきます。

最初は1つの細胞だったものが、2細胞、4細胞、8細胞……と分裂し、さらに成長すると「胚盤胞」と呼ばれる段階になります。

通常の観察では、胚を培養器から取り出して顕微鏡で確認する必要がありますが、タイムラプスでは培養環境を保ったまま、胚の変化を記録することができます。

また、画像で連続して確認することで、その時点の胚の状態だけでなく、どのように成長してきたのかという「過程」も確認することができます。

胚は一つひとつ成長のスピードや形が異なります。

培養士は、タイムラプスで記録された胚の成長過程を確認しながら、一つひとつの胚を丁寧に見守っています。

◎胚を凍結保存します

当院では、基本的に胚を凍結保存し、後日、移植のタイミングに合わせて融解して使用します。

胚の凍結には「ガラス化法」という方法を用いています。

凍結する胚を適切な処理液で処理した後、非常に短時間で凍結することで、胚の中に大きな氷の結晶ができるのを防ぎます。

凍結された胚は、専用のタンク内で液体窒素を用いて保存されます。

移植する際には、凍結した胚を融解し、状態を確認したうえで移植に向けて準備します。

◎移植する胚を準備します

胚移植の日には、凍結していた胚を融解し、状態を確認します。

その後、医師が子宮内へ移植できるよう、胚を移植用のカテーテルに入れる準備をします。

ここまで来ると、採卵から始まった一連のラボでの仕事も大きな一区切りとなります。

●培養士が大切にしていること

卵子や精子、胚は、とても小さな存在です。

だからこそ、培養室では温度やガス環境、培養液など、胚が過ごす環境を細かく管理しています。

また、取り違えを防ぐための本人確認やダブルチェックなど、安全面にも細心の注意を払っています。

培養士の仕事は、患者さんに直接見ていただく機会が少ない仕事かもしれません。

しかし、採卵された卵子が受精し、胚へと成長し、移植されるまでの間、私たちは一つひとつの胚と向き合っています。

「培養士って何をしているんだろう?」と思っていた方に、少しでも私たちの仕事を身近に感じていただけたら嬉しいです。

これからも安心して治療を受けていただけるよう、丁寧な胚培養と安全なラボ運営を心がけていきます。