❄胚凍結の話☃

 こんにちは。培養室です。

早くも梅雨に入り、うっとおしい天気の日が続いていますね☔☔☔
今年は久しぶりに蛍を探しに行こうと思っていたのですが、予想以上に早い梅雨入りで行きそびれてしまいました。
蛍が一番多く見られるのは梅雨に入る直前の1週間ほどの間らしく、この時期に河原などに行くととても幻想的な風景が広がります。
皆様も機会があればぜひ見に行ってみてください。

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さて、今回は胚の凍結についてお話ししようと思います。

当院では、胚を凍結する際は「ガラス化法」という方法を使っています。

ガラスというのは見ての通り固体ですが、実は分子構造は液体とよく似た作りになっています。
胚を凍結する際は胚の分子構造をこのガラスに近い状態にするため、ガラス化と呼ばれています。

細胞はそのほとんどの部分が水分ですので、胚の中に水分が残ったまま凍結してしまうと、氷になる時に体積が増え、細胞を壊してしまいます。
そこで、試薬を使って胚を脱水し、細長いシートに移植1回分の胚を乗せて液体窒素の中で保存します。
凍結中は細胞の代謝は停止するので、凍結中に成長が進むということはありません。

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こういうシートの先に乗せて
凍結保存しています。

患者様にお渡しする報告書に「凍結本数 ○個 △本」と書かれていると思いますが、これは、凍結個数は○個で移植△回分という意味です。
胚は最高2個まで同時に移植することができるので、個数と本数は一致するとは限りません。

凍結中は胚の中には水分がほぼないため、細胞が小さく縮んだ状態になっています。
融解する時はこの状態の胚に少しずつ水分を加えてあげることで、もとの形に戻しています。
同時に細胞の代謝も再開するので、胚は再び成長を始めます。

胚の状態によっては、この凍結時の変化に耐えることができず融解した時に細胞の一部が変性してしまったり、胚そのものが死んでしまったりする場合もあります。

死んでしまった胚は残念ながら移植に用いることができませんが、生存している細胞が一定以上存在すればそれらが元気に成長を続ける可能性は十分ありますので、予定通り移植させていただきます。
実際に一部分が変性した胚を移植した方でも、無事に妊娠された方は少なからずいらっしゃいます。

過去に患者さまから、この原理を応用して人間も冬眠できないのかと質問を受けたことが何度かあるのですが、技術が進歩すればもしかしたら将来的に可能になるかもしれないですね❄💤

凍結や融解、移植前の胚の状態については、その都度培養士から詳しくお話しさせていただきます。
ご自身の胚について少しでも不安に思うことがあれば、いつでもご相談くださいね。

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