受精卵の質を左右するもの

 早いもので、2020年も残すところあと少しになりましたね。
12月に入ると街にはクリスマスソングが溢れ、それが終わるとお正月準備と、賑やかで慌ただしいこの時期が個人的にはけっこう好きだったりします。
まだまだ思うように外出もできませんが、年末年始のイベントもできる範囲で楽しみたいですね。


 さて、患者様に卵や精子についてのお話をしていると受ける質問に、
「精子の状態を良くするにはどうすればいいですか?」
「卵子の質を良くする方法はありますか?」
というのがあります。

そして、これに対して私たちは

「ストレスをためず、規則正しい生活をしてもらうのがいいですよ」
とお答えすることがよくあります。

 そんなこととっくにやってるよ、と思われる方もいると思いますが、これは決して適当に無難なことを言っているわけではありません。


『活性酸素』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

活性酸素は細胞の代謝の過程で必ず発生するもので、細胞のDNAに損傷を与えて老化やガン化を引き起こします。
細胞には損傷したDNAを修復する機能がもともと備わっており、受精卵もこういったDNA損傷を自分で修復しながら成長していきます。

 ところが、精子は父親の遺伝情報を卵子に届ける、という必要最低限の機能しか持ち合わせておらず、DNA損傷を自分で修復する能力がありません。
そのため、精子が受けたDNA損傷は蓄積され、その修復は受精後、卵子側の修復能力に頼ることになります。

加えてこの修復能力は加齢によってどんどん劣化し、それに伴って卵子もだんだんと自身のDNA損傷を修復するだけで手いっぱいになっていきます。

 なので質のよい受精卵を育てるためには、精子、卵子が活性酸素に晒される機会をできるだけ少なくしてあげる必要があるわけです。

この活性酸素、細胞の代謝過程で発生するのは仕方ないのですが、それ以外でも発生する要因はたくさんあります。中でもストレス、食品添加物、タバコ、過度の脂肪組織などは特に活性酸素を発生させやすいといわれています。

私たちが皆さんに
「ストレスを貯めず、適度な運動をして規則正しい食生活を」
と言うのはこういった理由からなのです。


 今のところ、卵子や精子に直接作用して質を良くする方法というのは見つかっていません。そして、活性酸素だけが精子や卵子の質を左右しているわけではありません。
 しかし、身体によいといわれていることは卵子や精子にも確実に良い影響を与えます。この機会に食生活や生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

 抗酸化作用を持つといわれる食べ物を食べたり、適度な運動で活性酸素を減らしたりすれば、美容やダイエットにも繋がって一石二鳥かもしれませんね。