着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の臨床研究結果

こんにちは培養室です。

当院も参加した日本産科婦人科学会による着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の臨床研究の結果が論文として発表されました。
Reprod Med Biol. 2023 Jan-Dec; 22(1): e12518.
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今回はその内容について見ていきたいと思います。

2019年12月1日から2022年8月31日までに日本の約200施設において2回以上の反復着床不全(RIF)、2回以上の流産(RPL)、あるいは染色体構造異常(CR)のある28~50歳の方が臨床研究に参加されました。

採卵周期は10,602 周期でRIFは7,099周期、RPLは2,993周期、CRは510周期でした。 妻の平均年齢は39.3 歳でしたが、RIFとRPL患者数は41歳で最も多く、CR患者数は40歳でピークでした。また53.8%が40歳以上でした。

合計42,529個の胚盤胞が染色体検査され、正常胚(A)は25.5%、モザイク胚(B)は11.7%、異常胚(C)は61.7%でした。採卵周期の38.3%で少なくとも1つの正常胚が得られましたが、61.7% は正常な胚盤胞が得られませんでした。

30-35歳では30%で正常胚を獲得できたのに対して、40-46歳では14.5%しか正常胚を獲得できず、加齢に伴い染色体異数性を有した胚の割合が増加していることが示されました。

移植可能な胚盤胞(AもしくはB)が少なくとも1つ以上あった6,080周期で凍結融解単一胚盤胞移植が実施されました。RIF患者の移植あたりの臨床妊娠率は65.5%、流産率は9.9%、RPL患者の移植あたりの臨床妊娠率は74.7%、流産率は11.1%、CR患者の移植あたりの臨床妊娠率は80.7%、流産率は11.8%でした。また移植した患者の妊娠率と流産率は、年齢に関係なくほぼ一定でした。

一部のメディアではPGT-Aを夢の検査のように取り上げ、PGT-Aを受ければ必ず妊娠できると思われている方もいるかもしれませんが、妊娠率は60-70%であり、正常胚を移植しても妊娠に至らない方もおられます。しかし、日本産科婦人科学会が今年公表した2021年の凍結融解胚移植の妊娠率は36.9%であり、移植あたりの妊娠率は改善する可能性が示されました。また、流産率についても2021年のデータによると24.8%であるため、流産率についても改善する可能性が示されました。

ただし、採卵しても60%以上の周期で正常胚が得られず、特に40歳以上の場合、正常胚を得られるまで、何回か採卵を繰り返す必要があると考えられるため、PGT-Aが採卵周期あたりの臨床成績を改善できるかどうかは不明のままです。

PGT-Aは保険適用外

2022年4月から体外受精が保険適用されましたが、PGT-Aは未だ保険適用外です。現在、ごく一部の限られた施設では先進医療Bとして実施されている程度で、全国の多くの施設では自費での検査となっています。混合診療が認められていないため、PGT-Aを希望された場合は採卵から胚移植後の妊娠判定まで全て自費での治療となります。したがって、保険治療回数をすべて使い切ってからPGT-Aを受けられる患者様が多い印象です。

PGT-Aの留意点を正しく理解しましょう

本論文からも分かるように、PGT-Aの最大のメリットは年齢に関わらず流産率を低下させることができる点です。流産は加齢に伴い増加するため、治療ピークの40歳以上の方にとって流産回避という意味でPGT-Aは大きな意味があると考えます。

一方で、PGT-Aの留意点を正しく理解する必要があります。

  • ・検査は必ず胚盤胞に対して行います。胚盤胞まで育たなかった場合、検査することはできません。

  • ・胚盤胞の細胞を採取することでダメージを与え、移植できなくなる可能性や着床できなくなる可能性が考えられます。

  • ・検査の結果、正常胚が1つもなく移植できないということが起こりえます。

  • ・正常と判定された胚を移植しても流産したり、赤ちゃんに何らかの異常が見つかる可能性もあります。

  • ・検査精度は100%でないため、正常に生まれる可能性のある胚に対して異常と判定される可能性があります。

  • ・検査が不成功に終わる可能性もあります。

PGT-Aに関しては必要に応じて当院からご案内させていただきます。
PGT-Aをご希望の方は担当医までご相談ください。