一般体外受精と顕微授精の違いとは?

こんにちは、培養室です。真夏を思わせる暑さが続いたかと思えば、最近は少し涼しい日も増え、6月らしい気候になってきましたね。一方で急な雨も多くなっていますので、お出かけの際は折りたたみ傘や天気予報のチェックが欠かせません。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

今回は、一般体外受精と顕微授精の違いについてお話ししたいと思います。

体外受精を行う際、「一般体外受精(媒精(ばいせい))」と「顕微授精(ICSI)」という2つの受精方法があります。どちらも卵子と精子を受精させるための方法ですが、その過程には大きな違いがあります。

今回は、それぞれの特徴や違いについてご紹介します。

まず媒精は、採卵した卵子と一定量の調整後精子を同じウェル(培養容器の区分けされたスペース)に入れて一定時間培養し、精子が自ら卵子の中へ入り込んで受精するのを待つ方法です。

自然妊娠では、精子が子宮から卵管へ進み、卵子にたどり着いて受精します。媒精はその環境を培養容器の中で再現した方法といえます。

媒精では、精子自身が卵子の周囲を取り囲む透明帯を通過し、膜と融合する能力が必要となります。そのため、受精に至るまでには精子の運動能力や受精能力が重要な役割を果たします。

次に顕微授精は、培養士が顕微鏡下で1個の精子を選び、専用の細いガラス針を用いて卵子の中へ直接注入する方法です。

男性不妊や、過去に媒精で受精しなかった場合などに選択されることが多く、現在では体外受精において広く行われています。

顕微授精では、精子が自力で卵子へ侵入する必要がないため、精子の数が少ない場合や運動率が低い場合でも受精が期待できます。

顕微授精では卵子に直接精子を注入するため、繊細な操作が必要になります。顕微鏡で精子の状態を丁寧に確認しながら、一つひとつ適した精子を選び、受精をサポートしています。

ところで、患者さまから「媒精と顕微授精ではどちらが良いのですか?」という質問をいただくことがあります。

これについては、どちらが優れているというわけではなく、それぞれに適したケースがあります。

精液所見が良好で自然な受精過程を期待できる場合には媒精が選択されることがあります。一方で、精子の数や運動率に課題がある場合や、過去に受精障害が認められた場合には顕微授精が有効な選択肢となります。

上記に加え、当院においては、顕微授精の方が媒精と比較して受精率が若干高い傾向にあること、一方で、顕微授精は多くの場合安全に行われますが、卵子に直接操作を加えるため、ごく一部の卵子では刺激によって変性してしまうことがあることから、初回採卵の患者様にはSplit法(卵の数を半々にして両方の受精方法を行うこと)を推奨しています。(ただし、実施には卵子の数、精子の濃度に基準があります)。

治療方針は、年齢や不妊期間、精液検査結果、過去の治療歴などを総合的に考慮して決定されます。

媒精でも顕微授精でも、最終的な目標は「良好な受精と胚発生」です。

培養士は、採卵された卵子と精子をお預かりし、それぞれの状態に合わせた最適な方法で操作を行っています。 受精方法について不安や疑問がある場合は、遠慮なく医師や培養士へご相談ください。