卵管鏡下卵管形成術 FT
~卵管のつまりを治しましょう~ 

みなさん、こんにちは!

いつの間にか10月となり、だいぶん秋らしくなってきましたね。

食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、いろいろな秋があるかと思います。さまざまな色どりある秋を楽しみたいものですね。

今回のブログは、以前もお話しましたが、卵管についてです。

妊娠成立には卵管がとても重要な役割を果たしています。

両側の卵管がつまっている場合にはタイミングを合わせても妊娠しませんし、片側の卵管がつまっている場合も妊娠の確率は下がります。

卵管閉塞
片側の卵管が閉塞している子宮

それでは… 

つまった卵管は元には戻らないのでしょうか?

卵管のつまりは治すことはできます。

つまり卵管を通していきましょうという手術になります。それが、卵管鏡下卵管形成術(FT)です。

卵管鏡下卵管形成術(FT)

卵管鏡下卵管形成術(FT)は…

膣から子宮内へカテーテルという管を入れていきます。

カテーテルの中にはバルーン、風船状の管が入っており、それに少しずつ圧をかけて膨らませながら、卵管の中を通していきます。さらに卵管内に水を通すことにより、卵管の状態を改善していきます。またバルーンの中には細いカメラ(内視鏡)が入っており、そのカメラで卵管内の状態、例えば癒着や炎症所見などを確認していきます。

卵管を通していく時間は、片側5分もかからず、あっという間に終わる手術です。麻酔は静脈麻酔を使用します。朝に来院し、昼前ごろには帰ることのできる、日帰り手術です。

文章で書くと簡単な手術のように思えますが、FTは術者の経験が成功に大きく関与する手術です。私も一番最初に見学からFTに入らせていただいたときは、先輩に卵管の入り口がここだよと言われても、さっぱり分からず、卵管内をバルーンが通っていく感触なども何のことやら?という状態でした。FTを本格的に始めてから約15年。今では、カメラを子宮内に入れた瞬間に灌流液による子宮内膜の動きや子宮の向きや形態から予想をつけたところに、パックリと卵管の入り口を見つけることができるようになりました。麻酔が良く効いている方は聞こえないと思いますが、軽く効いている方は、私の“ここ、ここ”という言葉が聞こえたら、あー卵管の入り口見つけたな!と思ってください。入り口が見つかれば、そこからは卵管内にバルーンを進めるだけです。バルーンを進める手先にかすかに伝わる卵管内の圧力を感じながら、押したり引いたり、角度を変えたりしながら、卵管を通していきます。

両側の卵管がつまったままでは体外受精をしないと妊娠しませんが、FTで卵管を通すことにより、タイミング療法や人工授精での妊娠が可能になります。

不妊治療における手術、子宮、卵管、卵巣の状態を改善し、体外受精ではなく、一般不妊治療(=タイミング療法・人工授精)での妊娠を目指す不妊手術すなわち、FTも腹腔鏡も含めますが、その術後の妊娠率は30%程度と言われています。両側卵管閉塞では、体外受精をしない場合、その妊娠率は0%ですが、FTを行うことにより30%の妊娠率が得られるというのは大変意味のある手術だと思いませんか?

ただし、FTは卵管がつまっている方全員に効果があるというものではありません。卵管のつまっている部分でも適応か否かは決まってきますし、またタイミングや人工授精でも妊娠可能なだけの精液所見でないといけません。また、時間的猶予の少ない方(年齢的、卵巣機能の悪い方)はFTよりも体外受精をお勧めします。

院長 園田桃代